林冲



ふいに一陣の風が湧き起こった。
桜の梢が翻り、花が蝶のように舞い上がる。
降り注ぐ桜吹雪に、魯智深は思わず目を閉じた。
そして、風が収まり、再び目を開いた時、舞い散る白い花びらの中に一人の男が佇んでいるのを見た。
桜まじりの春風に、深緑の戦袍がさらりとたなびく。
降る花を肩に受け、遠い梢を見上げている。
その姿は、まるで風と共に天空から下りてきた者のようだった。


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